中古車市場


 何度か話しているので知っている人も多いと思うが、 アメリカの中古車市場は高い。 中古車を買うのに、 1 万ドル用意しても、まだ足りないのである。 1 万ドルといえば、今のレートだと 140〜150 万円である。 例えば、日本で 140 万円で中古者を買おうと思うと、 まずは車種を決めない事には話にならないだろう。 ところが、アメリカの場合は、以下のようになる。

 「すみません、車探してるんですけど。」
 「予算はどんなもんだい ?」
 「 1 万ドルで考えてるんですけど」
 「あぁ、それだったら、今はこれしかないねー」

 そう、恐ろしい事に、 1 万ドルの予算では、 店で 1 台程度の選択肢しか無いのである。 しかも、出てくる車が、 日本ならどんなに高くても 50 万円程度としか思えないものである。 これはけっこう泣ける。 ということで、アメリカに住む事になった場合は、 住む期間にもよるが、数年間住む事がはっきりしているのであれば、 新車を購入する事をお勧めする。

 ところで、アメリカの中古車ディーラーは車を知らないようだ。 いや、冗談や比喩ではなく、本当にわかっていなさそうなのである。 アメリカには Blue Book という本がある。この本は、年式、車種、走行距離等のデータから、 中古車価格の相場を一覧にしている本である。 先のリンクから、 web 上の同じサービスが利用できるので、 興味のある人は試していただきたい。 で、アメリカ人は、この Blue Book を見て、

 「お前の値段、相場より高いやんけー !! 」

と交渉するらしい。すると、店の方も、

 「じゃ、もうちょっと安くしとくぜ」

となるそうだ。つまり、この本によって市場が決定されているというか、 市場が全て把握されているというか、 とにかく、そういう不思議な状態なのである。 そこで、店の方も、その本の通りに値段をつけるというか、 結局、不勉強なのである。

 具体例を挙げよう。私が心の師匠として尊敬する 金城 氏の愛車は、 Mitsubishi の Eclipse である。 ( 注: 愛情を注いでいるかどうかは別として、 ここでは『愛車』と書かせていただく。 ) 金城氏は 96 年から Pittsburgh 在住で、 1 年目に中古で Eclipse の 93 年モデルを購入した。 当時、値引き交渉無しで、税別 8,000 ドルで購入したそうだ。 そして今回 ( 98 年 ) 、私が車を購入するにあたって、 Eclipse を 2 台みつけた。 そのうち 1 台は、金城氏の購入先と同じディーラーである。 今回見つけたのは 95 年モデルだったのだが、 車のグレードが違うため、エンジンも異なれば、 ボディのデザインも明らかに違う。 例えるならば、シルビアの J's と K's を想像していただきたい。 それ位違う車種だったにも関わらず、 値段は金城氏の愛車と同じ 8,000 ドルであった。 さらに、ディーラーのオヤジと話すと、 当然、車を売り込むためのセールストークが始まったわけだが、 どうもポイントが違う。 例えば日本なら、

 「ボディに傷も無いし、走行距離もあまりいってないですよ。
  それに、ほら !! エンジンもよく回るんですよー !!」

などという会話になるところだろう。 ところが、アメリカの場合は違う。

 「ボディに傷も無いし、エアコンも動きますよ。
  それに、ほら !! パワーウィンドウもバッチリですよー !!」

となる。場合によっては、上記説明ににカーステレオが入る。 さすがにパワステは自慢されなかったが、 アメリカではパワーウィンドウとエアコンが重要らしい。 ディーラーの数としては、おそらく 10 〜 15 軒ほど回ったと思うが、 最初にエンジンの良さを説明するディーラーは 1 軒も無かった。

 さらに、別のディーラーで見つけた Eclipse は、 Mitsubishi 製ではなく、 Eagle 社の Talon という OEM 製品だった。 MT 車でサンルーフ付きと、違う点はたくさんあったし、 車の状態としては明らかにこちらの方が劣悪で、 ワイパーに錆が出ている状態だった。 ( 正確には、最初の Eclipse が特に良かった、と言うべきであろう。 ) が、年式は 95 年モデルで、 値段もやはり同じ 8,000 ドルである。 これは明らかに、

 「ふんふん、 Eclipse で、 3 年落ちね。
  そうすると、この表で選んで.... 値段は 8,000 ドルか」

と、車種と年式だけで値段を決定して、 それ以外の要素は、車のグレードすら無視しているとしか思えない。

 ということで、中古者を購入する際には、 是非 Blue Book を参考にしていただきたい。 ちなみに私は全く参考にしないで金城氏に連れて回ってもらい、 金城氏に代理交渉してもらい... という、 金城氏に「おんぶにだっこ」してもらう状態だったが、 その甲斐あって(?) 、金城氏イチオチの Mazda Miata を税込み 12,000 ドルで購入できた。 走行距離が少ない点とハードトップ付きという条件を考慮すると Blue Book の相場よりも安い値段だったので、 お買い得だったのだろう。 決して、

 「日本円で 180 万円かー。一番低いグレードで良ければ、
  日本でロードスターの新車が買えそうだなぁ」

などと考えてはいけない。(苦笑)
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